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医療ビッグデータとは

公開日: 2024.05.01

データプラットフォーム分野

医療ビッグデータとは

目次

かつて医療機関などごとに紙のカルテで管理されていた医療データは、デジタル技術の発展によってデータ化が進みました。そして医療データはビッグデータ解析により、疾患の早期発見や生活習慣病の改善、そして個人の体質に適したオーダーメイド医療などに活用されるようになりました。上記のように様々に利活用するために統合および集約された医療データは、今、「医療ビッグデータ」と呼ばれ、医療の新たな展望を切り開く鍵となっています。 

本コンテンツでは、「医療ビッグデータ」がどのように活用され、医療分野でどのような発展が期待されるのかを解説します。 

医療ビッグデータとは

「医療ビッグデータ」とは、日本全国の医療機関や薬局、健康保険組合などに分散して保有されている個人のさまざまな医療情報を統合し、集約したものです。「医療ビッグデータ」を解析することで臨床試験や治験データの代替として用いるなど、研究や創薬などの分野での活用が期待されています。

「医療ビッグデータ」のデータホルダおよび関連サービスの担い手は、医療機関や保険者、調剤薬局などが代表的です。

「医療ビッグデータ」は個人の取り扱いに注意や慎重さが求められる情報も含まれているため、情報の活用を促進するためには法令等によるルールづくりも必要となります。代表的なものとして、2017年5月に施行された改正個人情報保護法(正式名称:個人情報の保護に関する法律。2003年5月制定、2005年4月全面施行)において「要配慮個人情報」や「匿名加工情報」など、現在の「医療ビッグデータ」活用に影響する内容が規定されています。また、個人情報保護法は、国際的な動向や情報技術の進展、それに伴う個人情報を活用した新たな産業の創出および発展の状況などを勘案し、3年ごとに改正を行うこととされています。

 さらに2019年5月に公布された「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」において、NDB (National Database of Health Insurance Claims and Specific Health Checkups of Japan:レセプト情報・特定健診等情報データベース)と介護DB (介護保険総合データベース)の両データベースの情報の提供(第三者提供)、連結解析を定め、相当の公益性を有する研究等を行う自治体・研究者・民間事業者などの幅広い主体に対して両データベースの情報を提供することができることを法律上明確化しました。その結果、たとえば製薬会社が新薬開発のためにデータベースの情報利用できるようになるなど、法規制の改正は「医療ビッグデータ」の活用を後押しする方向で動いています。 

以上のように「医療ビッグデータ」は、今後のビジネス活用が期待されています。 

「医療ビッグデータ」の利活用は急激に増えており、株式会社グローバルインフォメーションが2021年に発表した市場調査レポート では、世界の市場規模は2022年に368億米ドルに達し、当面2桁増ペースで拡大すると予測されています。 

日本国内においても、厚生労働省が「データヘルス改革推進本部」を立ち上げ、「医療ビッグデータ」の利活用を推進しています。株式会社日本能率協会総合研究所 マーケティング・データ・バンクによると、2021年度に131億円だった医療ビッグデータ分析サービス市場規模は、2024年度には210億円、2027年度には360億円へ拡大すると推計されています。

※株式会社日本能率協会総合研究所 マーケティング・データ・バンクサイトより引用

出典:政府広報オンライン 「個人情報保護法」をわかりやすく解説 個人情報の取扱いルールとは?

   : 厚生労働省 「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律」

  :株式会社グローバルインフォメーション 医療向けビッグデータアナリティクス市場レポート

  :厚生労働省 データヘルス改革推進本部 

医療ビッグデータの種類

では具体的に、「医療ビッグデータ」にはどのような種類のデータがあるのでしょうか。

代表的なものとして、以下のように大きく5種類のデータに分類して解説します。

 

レセプトデータ

レセプトは、医療機関が保険者に発行する診療報酬明細を示します。医療機関を受診した患者の傷病名や実施した医療行為の詳細と、医療費の請求情報が記載されています。病院・歯科医院だけでなく調剤薬局でも作成され、月に1度患者ごとにまとめられています。 

DPCデータ

DPC(Diagnosis Procedure Combination)は、急性期入院医療を対象とした診療報酬の包括評価制度(DPC制度)に基づいて、同制度に参加している医療機関から厚生労働省に提出される診療情報などのデータです。カルテのサマリーのようなデータから、入退院の日付や入院中の診療区分、診療報酬請求情報をまとめた資料などが含まれます。

電子カルテや検査データ

電子カルテは、従来医師が診療の経過を記入していた紙のカルテ(診療録)などを電子情報として編集・管理し、データベースに記録するものであり、医療機関で行われた傷病の治療情報や処方薬、そして検体検査情報などが集約されたデータです。くわしく症状や治療の概要が記載されているため、医療データベースの活用には欠かせない情報です。 

PHRデータ

PHR(Personal Health Record)は、生涯にわたる個人の保健医療情報 (健診(検診)情報、予防接種歴、薬剤情報、検査結果等診療関連情報および個人が自ら日々測定するバイタルや生活記録(血圧、体重、歩数、睡眠、食事などのデータ) をさします。PHRは、医療機関以外の日常生活の中でのデータも含まれるため、生活習慣などと紐づけた分析などで重要視されるデータです。

 健診情報

医療機関などで行われる健康診断や人間ドックの結果データで、幅広い年代のデータが取得されます。特に40歳から74歳の方を対象に、メタボリックシンドロームに着目して行われる健康診断の結果は「特定健診情報」とよばれ、生活習慣病の分析などに活用されます。さらに人間ドックのデータは詳細なデータが入手可能なため、これらの活用が期待されます。 

その他、「医療ビッグデータ」には、遺伝子検査によって得られた遺伝子情報や、医薬品や治療法の開発に関わる臨床試験データなども含まれます。「医療ビックデータ」の活用は、今後利活用が期待され注目されている分野です。今後さまざまな情報を、当サイトにて発信していく予定です。

  

国内における大規模企業コホートデータ「NTTコホート」による活用例

このように近年注目されている「医療ビッグデータ」ですが、NTTグループでも従業員の人間ドックの健診情報などを蓄積し、NTTグループ社員の人間ドック受診時に本人の同意に基づき実施した遺伝子検査の結果などとあわせたコホートデータ(「NTTコホート」)のデータ活用を進めています。

※NTTグループにおける遺伝子検査受検希望率は約8割(2023年度実績) 

2024年3月時点で約8万人を 超える遺伝子検査受検者数を誇る、国内における大規模な企業コホートとなっています。共同研究者である東京大学からは、量だけでなく、NTTコホートに登録されている一人一人の健康診断や人間ドックで取得される健診情報 が長期的かつ欠損が非常に少ない状態で収集されているという点において、質的にも研究価値が非常に高いという評価を受けています。

※下記、東京大学医科学研究所、日本電信電話株式会社、当社の共同報道発表資料より

https://files.microcms-assets.io/assets/29cc195f956d44c8bd0557138c26cb00/1dbb06fa6375469cbed32e9d6ca9f439/20200928_01.pdf

NTTライフサイエンスの事業ビジョン

今後、法令指針ガイドラインなどを遵守したうえで、「NTTコホート」を用いたサービスの提供を検討していきます。医療関係のみならず、薬学・食品・化粧品などを取り扱う企業さまからもお問い合わせをいただいており、企業のR&Dやマーケティングにも活用いただけるものと考えています。

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